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※系譜ED後捏造未来

　拝啓　アスベル・ラントさま
　アスベル、元気ですか。今日はXXXが無事ラント領主になりました。ラントはいつもと同じようにお祭りをして、XXXをお祝いしました。カニタマ焼の屋台も出ていて、お店の人が「ソフィ様は特別だからね！」とサービスでタダでくれました。すっごく美味しかったです。
　それから、バロニアからウィンドルの王子もやってきて、一緒にご飯を食べました。彼はリチャードに少し似ています。「僕の戴冠式の時にはソフィ様も来てくださいね。ロイヤルカニタマ、用意しておきますから」と言っていたので、今からもう楽しみです。
　アスベル、そちらに変わりはありませんか。シェリアとケンカしてない？おいしいカニタマいっぱい食べたけど、シェリアのがやっぱり一番おいしいです。
　会いたい

「……」
　わたしは書きかけの手紙をくしゃりと丸めてゴミ箱に捨てた。こんなこと書いちゃだめ。アスベルが困ってしまう。XXXたちがアスベルとリチャードに似ていたから、いつもより寂しくなっちゃったんだ。わたしはもう一度手紙を書き直そうとして、ペンを置いた。そういえばペンの形もずいぶん変わったなあ。この邸から見える風景はあまり変わっていないけれど、家の造りや皆が着ている服はあの頃とは違う。
　もう夜も遅かったけど、わたしは警備の人に声をかけて外に出た。いつもよりすんなり許可が出て不思議に思っていると、目的地にはXXXが居た。XXXはわたしに気付くと少し驚いて、それからお墓の前を開けてくれた。
「ソフィもアスベル・ラントに会いに来たのか？」
「うん。今日のこと、報告しようと思って」
「そうか。俺もだ」
　わたしがアスベルと一緒にお墓参りしていたころはまだ小さかったのに、今では何十人もの名前が刻まれた石碑が鎮座している。全員、わたしが知っている名前だ。彼も彼女も、生まれたときからずっと一緒にラントを守ってきた仲間だった。
　刻まれている名前の、最初のほうにアスベルの名前はある。今では伝説と語り継がれているけれど、ここではあくまでも歴代のラント領主の一人に過ぎなかった。
「こうして見ると、歴史を感じるな。祖父さんや曾祖父さんの名前もある。ソフィは、ここに眠る人たちみんなを見守ってきたんだな」
「……うん」
「寂しいか？」
　風がザアと吹いた。ここに吹く風はいつも気持ちがいい。クロソフィを遠くまで運び、今も残る風車を回す。
「アスベルはね、だから、わたしをラントに残してくれたんだよ」
「え？」
「ここには、みんなが居るでしょう？」
　わたしは石碑を前に両手を広げた。あなたもいつか誰かと結婚して、お父さんになって、領主をこどもに譲って、そしてここで眠る。わたしはそこに、ずっと居る。あなたの生まれる前から、永遠の眠りについた後も、ずっと。
「だからわたしは会いに来るの」
　寂しいよ。寂しいから、会いに行くよ。わたしと一緒に、しあわせを願った人たちに。そうするとね、切ないけど、みんなが居るから、今までありがとう、こどもたちをよろしくと安らかに眠っているから、寂しくなくなるんだよ。アスベルがくれた、今も続いてるプレゼントなんだ。
　XXXは少し切なげに笑った。
「やっぱりアスベル・ラントはすごいな」
「違うよ、わたしのお父さんがすごいの。伝説とか、関係ない」
「……ははっ、ソフィの親父さんはすごいな！」
「でしょう？」
　XXXもいつかはここに眠る。わたしはあなたの子孫と共に、あなたを偲んでここに来る。みんながここに居る限り、わたしはいつだってみんなに会えるの。

　アスベルへ
　アスベル、元気ですか。今日はXXXが無事ラント領主になりました。ラントはいつもと同じようにお祭りをして、XXXをお祝いしました。カニタマ焼の屋台も出ていて、お店の人が「ソフィ様は特別だからね！」とサービスでタダでくれました。すっごく美味しかったです。
　それから、バロニアからウィンドルの王子もやってきて、一緒にご飯を食べました。「僕の戴冠式の時にはソフィ様も来てくださいね。ロイヤルカニタマ、用意しておきますから」と言っていたので、今からもう楽しみです。
　アスベル、そちらに変わりはありませんか。わたしは元気だよ。ずっと見守ってるから、ずっと見守っててね。
　ソフィより


BGM:雨色サテライト