芭曽

狼少年、羊に恋する。

「好きですよ」
信じてもらえないだろう。
「な、んて、言った？」
ほら。
「二回も言わせないでください」
信じてもらえるはずがない。
今も（師匠であるのにも関わらず）重い一撃を鳩尾へ入れた。
こんな酷い弟子、聞いたことが無い。
「い、痛いよ曽良君・・・」
「聞いてなかった貴方が悪いんでしょう」
自分でも捌き切れない感情。
気持ち悪くて、怖い
それを
貴方の言葉で言うのなら
「好きですよ、芭蕉さん」
影にいる自分が口にするにはあまりにも嘘のような台詞。
信じられるわけ、
「ありがとう」
「え？」
「え、だって好きって言ってくれたから」
信じてもらえた？
「ありがとう、曽良君」



「私も好きだよ」
多分内包される意味の深さには気づいてない。